真夜中の庭―物語にひそむ建築  植田 実

建築という視点から児童文学を読み解く。構造的なその取り組みは、冷静に児童文学の枠をとらえようとするが、読む内に児童文学だけの枠にとどまらない内面性(体験)が露呈する。特に幼い頃に読んだ読書体験は、作者自身がたどり着くべき建築的場所=空間へと誘う。

アンネフランクの日記について書いた「ある隠れがの記録」の最後のくだり

「夢見る少女でありながら、あまりにも冷徹なリアリズムの記述。日記空間を奪う外部から、ゲシュタポが隠れ家のドアを叩く。リアリズムをすら超えてしまうものが、彼女を連れ去った。」

とある。

はたして創造を超えたものとはどこまで許されるのか。 あまりにも悲痛で重い。それが今ある現実の中で、歴史として繰り返されないことを祈るばかりである。

ファンタジーや視覚的なるもの。

現実は厳しいとひとはよく云うが 、はたしてどちらが、厳しいのであろうか。

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