フレデリック・ワイズマン「ボクシング・ジム」
構図もスタイリッシュな訳ではないし、説明的なナレーションがあるわけでもない、どちらかというとただ撮っているだけのように見える画面を観て、ドキュメントをまじめに観てしまう人にはあっさりと終わってしまうのかもしれない。
ボクシングジムという現場でどういう練習をしていて、何の為にボクシングをしているのかは、もちろん見えてくる。パンチングボールの打ち方やマウスピースの付け方など、あまり見せないようなところも随所に出てくる。中でもおもしろいのが、野外に出てタイヤをハンマーで打ち続けるという練習風景が、説明ができないくらい気持ちよかったりする笑。
ここまでは、まじめにドキュメントという枠で観ることだと思うが、眠い目をこすってよく見てみると、そういう枠には収まらない部分も見えてくる。
特にスタジアムでのランニング風景とフットワークを使った練習は妙におもしろい。
ランニング風景では(ここだけでは、ありませんが)ひとつのカットの時間、カット時間と呼べばいいのでしょうか、が、ものすごく早い。早いことは誰でもできるのだけれど、それを感情の持続性の中で成り立たせ、かつ必然性に持って行くのは、なかなか出来ない。
そして短いカットだけでなく、より長いショットのカット時間も絶妙で、リング上でのフットワーク練習風景などは、もう呆気にとられてしまうくらい長く笑、とてもドキュメントの枠では、とらえきれない別の部分があるのではないかと思いました。
ワイズマンは、それらをフットワークのように巧みにコントロールしているのがとても憎らしいです笑。
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